三重県伊勢市河崎は、戦国時代から町の中を流れる勢田川を利用した水上輸送を中心に発展した商業の町です。
伊勢神宮巡礼と深いかかわりがあり、江戸時代には最大500万人という人々が街道と海を利用して訪れました。
そのため、この周辺では膨大な人数の食の提供や販売用の商品確保のため、伊勢周辺や大阪各地からの物資を水上輸送で集められ、「伊勢の台所」として発展しました。

街並みを歩く時にはあまり注意深く見ませんが、その名残である各家々の屋根瓦のデザインが”桃”であったり”蛙”であったり、”ガマガエルに乗る仙人”など、個性豊かな特徴があるのも必見の町です。

昭和初期に入り水上輸送から陸上輸送に変貌していく中で、河崎は衰退の危機に見舞われました。
昭和49年の水害後「勢田川改修事業」をきっかけに、河崎の街並みを保存しようという動きが生まれ、「伊勢河崎の歴史と文化を育てる会」が発足。その資料館の一つとして生まれたのが「伊勢河崎商人館」です。

伊勢河崎商人館は江戸時代/明治時代に建設された蔵7棟、町家2棟などで構成されている町屋です。平成13年(2001)に国の登録有形文化財に登録されています。

趣のある商人館に入ると、まず目に飛び込んでくるのが「エスサイダー」
このサイダーは明治42年(1909)から昭和50年代(1975~)にかけて、この場所で問屋を営んでいた商店が生産していたものを復刻したもの。当時の味を忠実に再現し、砂糖・酸味料・香料のみで生産、さわやかな酸味と昔懐かしい甘みを特徴としています。
このサイダーを目当てに訪れる人も後を絶ちません。

商人館の中庭。小さいながらも絵になる美しさがポイントです。


入り口から入るとレトロな日本家屋が広がっています。
商屋の居間である和室や茶室、日本家屋独自の空間”通り土間”。
この通り土間を抜けると奥にある蔵や、サイダー製造工場などにつながっています。
河崎の人々の暮らしが彩られている内部資料の展示もあります。

通り土間を抜けると昔”アワビの粕漬”などの商品製造場だった蔵や、立派な木材を使用して建てられた土蔵などが立ち並びます。
現在ではリフォームされ、ギャラリーやイベントを行う多目的スペースになっています。

その中の一つ、「河崎まちなみ館」。
ここには企画展示室と常設展示室があり、伊勢と川崎の歴史と文化を学ぶことが出来る資料室になっています。

詳しい解説がされているパネル展示の他、問屋を営んでいた小川家の当時の様子が分かる資料、伊勢湾を往来していた汽船の一覧表などが展示されており、当時の水上運輸の歴史が飾られています。

この場所には「日本最古の紙幣」があります。

これが「山田羽書-yamada hagaki-」と呼ばれる手形機能を備えた紙幣。江戸時代には丁銀や小判で売買されていましたが、商業の町として発展してきた伊勢で貨幣の代用として生まれ、流通した個人発行の紙幣です。

その種類も多くあり、白や赤、青や黄色の札。”丁銀”の記載があるものから「この券一枚で金一両と引き換え」と書かれたものまで、換金時に間違わないよう様々な工夫が施されています。

レトロな風景を楽しみたい方、伊勢の歴史に興味がある方、また「エスサイダー」が欲しい方はぜひ訪れてみてくださいませ。


 

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